雨を乞う





 頭痛がするくらいの妄想で大雨の中を掻き分けて迷走中、沈みそ
うに不安定な僕の手を取って、摂氏三十六度の円を構成した。天国
に続く神様の方舟はいつだって僕を迎えに来ることもなく、頭上の
不透明な雲の上でやうやうと泳いでいく。

 だって知らないだろう?多分君は僕の名前すら知らないんだ。手
向けた躊躇いの弔う贐は戸惑いもない涙を見せてしまいそうになる
んだ。僕の気持ちを葬りたい。君に集うなどきっと許されないん
だ。気丈に張っていた糸が危ういな、尖りながら雨に濡れていた、
錆付かないように黒い服を靡かせて、びょうびょうと鼓膜を裂く風
の中で僕の声を聞いてくれ。ああ!

 随分と愚かな乞いをしていたよ、僕の詩はいつも巧く届かないで
墜落していく。どうせ出せない手紙を抱いて、冷えていく身体を温
める術を知らない。一つの部品として死んでいく螺子のような気分
で雨に満つ。










帰路