熱帯夜





 救われないと思った。どうしても痛い傷ばかりが化膿する。そう
だな、与えられたならどこへ行こう?あの日の雨に僕を変えるいく
つかの化学物質が混ざっていたとしたら!朽ちそうな面影は夕立の
果てに消え去った。全部満ちて、それから、全部引いていく潮が、
酷く痛ましいケロイドの熱帯夜。暗雲は晴れて、僕はちょうど真っ
直ぐ立てるから、狼の髪の毛を震わせている僕をどうか盾にして、
あなたは行けよ、生けよ!疑うな、人間の致死率を。永遠と言う言
葉に恒に付き纏う猜疑心は、そうさ、僕らいつか果てなくてはなら
ないと触れ合う掌の温度が感付いているから。

 ポケットの中のただただちっぽけな小石はまるで僕で、弄んだ指
に気付かないくらいの傷をつけている。美しいとは相対性なもの
で、あなたより美しいものは沢山あるけれど、あなたより美しいと
いうのはとてもとても困難だ。戦うことも無くなった、でも明日は
来るようだ、死に損なって沖つ凪を漾う海月の気持ちで、泣いても
いいかい?










帰路