ブロッケン現象





 虹は結局粒子だから、許されない歓びを吸って繋ぎ留めて。でも
ね、存在ばかりの君を僕は想うことしか出来ずに、あの線を超える
のを諦めて。誰かの無事を祈れば誰かが死ぬ、その理を君と僕に当
てはめたりして、君を祈れば、僕は。

 名前の場所を教えてくれよ。どこの抽斗に隠したの?仰々しい書
物も、本当に意味がないんだな!呼んでよ、無意識に笑う僕のなま
えを。見失っては羨んで、届かない三年間で世界は周りながら愛を
失う。微熱が下がらないまま、苦しい呼吸器に水を。愛していた君
はもはや野獣で、静かな狂気に満たされていく僕はもはや怪物さ。

 気持ちが悪いと罵って君の満足を得られるならそれでもいい、僕
が口を開かない時は、何を意味しているのか知っているはずだか
ら。曖昧な潮、震えるガラス、前髪揺れた。さようなら、君や、薄
ら開いた瞼からこぼれ落ちている何かを見ない振りして。










帰路