発光





 明日、もし、世界の終わる日がいつだか判ってしまったとした
ら、僕はどうしたらいいんだろうか?その手を取って拙いワルツで
回ってひとつに溶けてしまおうか。それとも終わらないしりとりを
して、気付かないまま、そっと、心中しようか。瞼の裏側にはいつ
だって終わりの風景が見えていた、それは、君の骨張った拳が、あ
ぁ、冷たいなって思う風景。君は笑う、少しだけ唇を開いて、その
吐息に僕は最後の欲情をする感覚さ。僕らはひとつにはなれない、
ふたつにはなれない、そんな幸せな大地で、何百の流星の下で。

 ペインティングナイフを砥いで、僕は世界の気を惹かせる作戦
さ。オレンジ色の作業着が僕の血と絵の具と膠で汚れている。どう
せそうなんだ、僕の艶めく血はどす黒く乾いて、粘ついて、君よ!
そうか、君に伝わないのか。もがいて見せた蜩の星は。君を描く意
味を知っている?その呼吸も罠も憶えていたいからだよ。想いはい
つも裏切るから、明日の太陽なんて信じんも阿呆臭いね。僕はこの
髄液が滴る電気信号を以て、君の残像に斬り付けられたい。消えな
い瑕疵はいつまでも、甘い痛みで鈍く発光して、うまく届かないさ
よならをも受け入れる。










帰路